「産後パパ育休」「育休」改正内容をどこよりもわかりやすく徹底解説

「産後パパ育休」「育休」改正内容をどこよりもわかりやすく徹底解説

ここ数年で育休を取得するパパも増えてきましたね。

育休を取得するパパのための制度産後パパ育休
一体どのような制度なのか、詳しく知っていますか?

育児介護休業法には、育児休業の他に、パパの育児休業取得を促進するため、夫婦が協力して育児休業を取得できるように「産後パパ育休」「パパ・ママ育休プラス」といった特例が設けられています。

パパが当たり前のように育休を取れる環境づくり、さらに育休の充実をはかるため、2022年4月から育児介護休業法の改正が行われています。
2022年10月の「産後パパ育休」の制定と「育児休業」の改正により、育児休業がより柔軟に取得できるようになりました。

今回は、2022年10月から適用の産後パパ育休と、改正された育児休業育児休業延長について詳しく解説していきます。
後半には、継続される「パパ・ママ育休プラス」についても触れていきます。

取得には細かなルールがあり、複雑で覚えるのが面倒と思うかもしれませんが、せっかく持っている大切な権利です。しっかりと理解してどのように活用していくか、夫婦でしっかりと話しあっていきましょう。

1.「産後パパ育休」の内容をわかりやすく解説

2022年4月の育児介護休業法の改正で、事業主に対して労働者への育休取得の意向確認が義務付けられました。
「育休を取得するのかしないのか」は確認されますが、育休取得に絡む要件について、こと細かに説明してくれる会社は少ないかもしれません。

基本的に、育休や産休に絡む情報は、自らが進んで情報収集をしないと得られないと考えた方がいいと思います。

2022年10月からは「パパ休暇」は廃止され、新たに「産後パパ育休」が適用となります。

まずは「産後パパ育休」とは、一体どんな制度なのかを解説していきますので、一緒に確認していきましょう。

\2022年9月までの「パパ休暇」について詳しくはこちらの記事で!/

パパママと赤ちゃん

1-1. 「産後パパ育休」と「育児休業」は別の休業制度

「産後パパ育休」は、正式には『出生時育児休業』といいます。通称が「産後パパ育休」です。
名前が違っても同じ休業のことを指しています。

基本的な考え方として、出生時育児休業という名の通り、子どもが生まれたときに取得する育児休業です。
子供が1歳になるまでに取得できる、いわゆる従来の「育児休業」とは別の休業です。

まずはこのことを理解した上で、以下の章を読み進めてください。

育児休業取得条件に満たなければ産後パパ育休もNG

基本的に産後パパ育休も育児休業なので、下記のような育休取得条件に該当しない場合は産後パパ育休の取得もできません。

  • 入社1年未満の場合
  • 育児休業申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明確である場合
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の場合

1-2. 産後パパ育休は生後8週間までに取得する育休のこと

産後パパ育休の対象期間は、子供の出生日から8週間以内の期間です。

この8週間の間に、最長4週間まで休業することができます。
この4週間は、2回まで分割して取得することができます。もちろん、まとめて4週間とるのもOK!1週間だけ1回取得でもOK!
8週間の間に家庭の事情に合わせて、延べ日数4週間をどこで取得するか自由に決めることができます。

いきなりわかりずらいですね(^ ^;)

下記に取得方法の例を3つあげましたので、図と一緒にみていただくとイメージしやすいかと思います。

[例1]出生後すぐから4週間まとめて取得
出産時の付き添いから退院準備、ママが動けないこの時に取得するパターンが一番多いのではないでしょうか。

[例2]後半の4週間にまとめて取得
里帰り出産の場合など、自宅に戻るタイミングに合わせて育休を取得するパターン。

[例3]2回に分けて取得してもOK!
1回目は、産後すぐに2週間取得し、2回目は少し開けて2週間取得する、など、分割して取得するパターン。
取得期間が合計で4週間までならOKなので、3週間+1週間など、自由に組み合わせてくださいね。

産後パパ育休解説図

1-3. 産後パパ育休は連続で休めないパパに使ってほしい制度

前章の解説を見て、こう思った方いませんか?

あれ?
「パパ休暇」は生後8週間まで連続して休めたのに、4週間しか取れなくなったの?
これって、改悪じゃない??

こんな印象を持つ方も多そうなので、パパの育休制度についておさらいしましょう。

パパの育休制度は「産後パパ育休」と「育児休業」の2つがあります。
どちらも出生後すぐから取得することができます。

考え方のイメージとしてこんな感じです。

◎連続して育休が取得できる →「育児休業」
◎連続して育休が取得できない→「産後パパ育休」と「育児休業」を組み合わせて小分けで育休を取得

「産後パパ育休」は、出生時から連続で育休が取れない場合に、小分けにすることで育休を取得しやすくする意図があります。
出生時から連続して育休が取得できる環境であれば、はじめから育休を取得しましょう。

育児休業について詳しくは、この後の2章で解説していますので、参考にしてください。

1-4. 産後パパ育休取得の申出期限

産後パパ育休を取得したい時は、必ず事前に申し出る必要があります。
赤ちゃんが生まれてから取得したい!と言っても急には取得できませんので要注意!

では、申出はいつまでにしなければならないのでしょう?

原則として取得する日の2週間前までに申し出る必要があります。

取得は出生日からになりますが、確実な出生日(=取得日)は事前にはわかりませんよね。
なので、ここでいう「取得日」は「出産予定日」として申し出をしましょう。

さらにもう1点!これも忘れずに一緒に申し出!
産後パパ育休を2回に分割して取得したい場合は、この時に必ず分割取得の申し出をしてください。
産後パパ育休に入ってから「やっぱり分割したい」と言ってもtoo late。分割取得への変更はできませんので要注意!

まとめて取るか、分割するかは、事前に決めて申出する必要がありますので、よく覚えておいてくださいね。

産後パパ育休解説図

予定日で申し出するのはわかった!
でも、予定日より遅い出産になったら、育休取得の対象期間は短くなっちゃう??

と心配になりますよね。

大丈夫です。
対象期間が短くなることはありませんので安心してください!

予定日より早い出産、遅い出産それぞれで、産後パパ育休の対象期間のカウント方法がありますので、次の章で詳しく解説します。

1-5. 出生日が出産予定日と前後した場合の取得可能期間

出産予定日を産後パパ育休の開始日として申し出を行いますが、実際の出生日は予定日と前後することがほとんどですね。

予定日より早い出生と遅い出生の場合、それぞれの産後パパ育休対象期間のカウント方法について、解説していきます。
文字だけではわかりにくいので、下図と一緒にご確認ください。

● 予定日より早い出産の場合
出産予定日からカウントして8週間後の日の翌日までの期間に出生日から出産予定日の前日までの期間を加えたものが取得可能な期間
※ただし、早まった期間を繰上げで取得できますが、これには申し出が必要で条件があります!(詳しくは下図で説明)

● 予定日より遅い出産の場合
当初の出産予定日を育児休業の開始日として取り扱います。
出生日からカウントして8週間後の日の翌日までの期間に、出産予定日から出生日の前日までの期間をを加えたものが取得可能な期間です。

産後パパ育休解説図

産後パパ育休解説図

「+α期間」=「開始日の繰上げ」
を行う場合は、変更後の休業開始日の1週間前までに変更の申出をすることが必要です。
変更の申出がこれより遅れた場合、申出があった日の翌日から起算して1週間を経過する日までの間で、事業主が開始日を指定することができます。

かなりややこしい条件です><

出産が早まった期間と予定日の日数「+α」期間がまるっと繰上げになるかどうかは、申出した日によるということです。
しかも、事業主が開始日を決められるというルールなので、会社側と要相談ということになるのです。

1週間前の申出ってどうなの??
それって、ほんとんどの人が無理じゃない??

そう思ってしまいますよね><

ママやお腹の赤ちゃんの体調によって、出産日を早めることが決まった場合であれば、1週間前の申出はスケジュールによっては可能です。
ただ、急に陣痛がきて出産日が早まった場合は、1週間前に申出なんてできるわけがありません!

従ってこの場合は、出生後に申出してください。
出生の翌日から1週間を経過する日までの間のどこかが、繰上げ日に指定されることになります。しかも事業主が決めることなっているので会社とよく相談してください。

結論。
予定せず自然と早めの出産となり、この期間が短い場合はあまり有効的ではなさそうです。
でも数日でも繰上げできる可能性は十分にありますので、出生したらすぐに申請をするようにしてください!!

1-6. 産後パパ育休中の就業

通常の育児休業期間においては、原則として就業は不可とされていますが、産後パパ育休中においては、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲内で休業中に働くことができます。

ただし、就業可能日数については上限が設定されています。

●休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
●休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

▼ 詳しくは下記厚生労働省の規定例にてご確認ください。
[参考]厚生労働省:育児・介護休業等に関する規則の規定例

2.「育児休業」の内容をわかりやすく解説

2022年10月からの「産後パパ育休」の創設と同時に、これまでの育児休業』の内容も改正されました。

具体的には、一度しか取得できなかった育児休業が、2回に分けて取得できるようになりました。
また、育児休業の延長も改正され、育休延長開始日が選べるようになり夫婦交代で育休を取得できるようにもなりました。

分割取得が可能になったことで、家族の生活スタイルに柔軟に対応できるようになりましたが、その分、複雑さが増したような感は否めません。

本章では、育児休業について、取得例を交えながらできる限りわかりやすく解説していきます。

2-1. 1歳までの育児休業を2回に分割できる

これまでの育児休業は連続して取得しなければならず、一度復職したら二度と育休には戻れませんでした。

改正後からは、夫婦共に2回に分割して取得することが可能となりました。

「長期で連続して休むのは難しい。」
「この時期はどうしても復職しなければならない。」

などの事情がある場合、一時的に復職して再度育休が取得できるようになったため、夫婦交代で子育てをするスタイルも実現できるようになりました。

もちろん、これまでと同じ、連続して1歳まで取得するのもOK!
夫婦一緒に1歳まで連続取得、どちらかだけが分割取得など、ご家族の生活スタイルに合わせて選んでいきましょう。

2-2. 育児休業を夫婦で最大期間で取得する

下図は夫婦一緒にMAXで育休を取得するパターンです。

ママの場合、産前産後に法的に働いてはいけない期間「産前産後休業」がありますので、この産休が終了した翌日から育休がスタートします。終了日は子供の誕生日前日まで。産休と育休合わせて1年間取得することができます。

パパには産休がありませんので、子供が誕生した日から育休がスタートし、終了日は同じく子供の誕生日前日まで。1年間取得することができます。

産後パパ育休解説図

2-3. 育児休業の分割取得:パパだけ分割するパターン

下図は、分割取得の例その1

ママはがっつり連続して育休を取得、パパが短期間で必要な時期に2回取得するという、分割取得で一番多そうで現実的なパターンかと思います。
パパが連続して育休取得が難しい環境のため、必要な時期に合わせて小分けで育休を取得するイメージですね。

育児休業は、出生後8週間の翌日から子供の満1歳の誕生日の前日までが対象期間です。

産後パパ育休解説図

2-4. 育児休業の分割取得:夫婦で分割して交代するパターン

次の下図は、分割取得の例その2

夫婦で育休を交代するパターンです。
このパターンにあてはまるのは、ママもパパも長期休業が難しい仕事環境である場合が考えられます。
ママパパそれぞれが2回まで分割して取得できるので2~3ヵ月単位で交代することができます。

産後パパ育休解説図

これまで一度復職すると二度と育休に戻れなかったルールから、また育休に戻れるというのは確かに柔軟性があります。

例えば、本当はがっつり連続して育休をとりたいけど、どうしても一時的に復職しなければならない!という場合などは、また育休に戻れるので便利だと思います。

ただ、育休中なのに一時的に復職が必要なシチュエーションが多いとも考えにくく、また、復職と育休を繰り返すというのは、現実的にはかなりハードルが高い。さらに、夫婦共に休みがとりやすい職場環境でないと実現できないと思います。
そして、パパ一人で問題なく赤ちゃんのお世話ができるということが何より重要ですね。

2-5. 育児休業取得の申出期限

育児休業を取得する場合は、原則として休業開始の1か月前までに雇用主に申し出する必要があります。

育児休業を分割で取得する場合は、取得の際にそれぞれ申し出をします。
前述していますが、産後パパ育休の分割は最初にまとめて申し出しなければなりません。
それぞれの申出期限が異なりますので、注意しましょう。

  • 育児休業』取得する時にそれぞれ申し出る(休業開始の1ヵ月前まで)
  • 産後パパ育休』最初にまとめて申し出る(休業開始の2週間前まで)

もし、申し出が規定より遅れてしまった場合は、雇用主が休業開始日を指定することができます。ただし、雇用主が指定できるのは、申し出のあった日の翌日から1ヵ月の間です。
育休の予定が早めに決められるのであれば、産休または産後パパ育休の申し出の際に、一緒に育休取得の申し出もしておけば安心ですね。

※実際の出産が予定より早くなったり、配偶者の疾病や死亡で育児ができなくなった場合などは、休業開始予定日の1週間前までの申し出であれば認められます。

産後パパ育休解説図

3.「育児休業延長」の内容をわかりやすく解説

育休は子供が1歳を迎えた時点で終了しますが、保育所の待機児童になってしまい自宅保育の継続が必要になった場合などに限り、最長で子供が2歳を迎えるまで期間を延長することができます。

2022年10月の法改正で、育児休業の延長も改正されました。
具体的には、育休延長開始日が選べるようになったことで、夫婦交代で育休を取得しやすくなり、柔軟性がアップしました。

本章もオリジナルの図解を共に、まずは、基本的な育休延長の取得例から順を追って解説していきます。

3-1. 育児休業の延長の条件

育児休業の延長は、子供が1歳の時点で保育所等に入所できないなど、雇用の継続のために休業が特に必要と認められる場合に限り、育休の期間を延長できる制度。

判断の基準は、育児休業が終了する1歳時点で待機児童になってしまった場合、まずは半年間の延長を申請できます。
次に、1歳半の時点でまだ保育所に入れない場合、子供が2歳まで再延長することができます。

再延長する場合は、1歳6ヶ月までの延長と、2歳までの再延長の2回手続きが必要です。

育休延長の条件

  • 子どもが1歳に達する日において、本人または配偶者が育休を取得している
  • 保育所に入所できないなど、1歳を超えても休業が特に必要と認められる

※保育所(無認可保育施設は除く)などへの申し込みをしたが、子どもが1歳に達する日後の期間について、当面の保育実施が決まっていない場合
※子どもが1歳に達する日後、養育を行う予定であった配偶者が、死亡、疾病、離婚などによって養育ができなくなった場合

産後パパ育休解説図

3-2. 1歳以降の育児休業延長の開始日が選択できる

2022年9月までの育休延長制度では、延長期間の開始日が「1歳」と「1歳6ヵ月」時点に限定されていたのが、2022年10月の改正により、育休延長の開始日を自由に選択できるようになりました。
また、1回目の延長期間の途中で復職した場合でも、2回目の再延長の期間で再度育休に戻ることができるようになりました。

開始日が選べることで、取得するタイミングが柔軟化し、例えば、夫婦が途中で育休を交代もできるようになったということです。

ちょっとわかりにくいですね><

次の章で1歳以降の延長期間に絞って図解していきますね。

3-3. 育休延長:パパだけ開始日を選ぶパターン

下図は、ママは育休から延長まで連続して取得、パパだけ育休延長の開始日を選ぶパターン。
育休明けに一度復職した後に育休を取得し、繰り返す例です。

例えば、

育休延長後も保育園の入園目途が立たないため、パパは一度復職します。
1歳半でも入園ができなかったため、ママは続けて育休を再延長します。
2歳で育休が終了するため、ママの復職や入園などの準備に合わせてパパも育休を再度取得します。

と、こんなシチュエーションをイメージしてみました。

産後パパ育休解説図

3-4. 育休延長:夫婦で育休を交代するパターン

下図は、“開始日を選択できる”という改正点を有効活用した「夫婦で交代」して育休を取得するパターン。

例えば、

  • 保育園の入園が厳しいエリア環境で、先の予定も見えずらい状況の場合。2歳までの育休延長は仕事にも影響を及ぼす可能性がある。
  • 職場復帰への不安もあるので、育児に影響がないよう復職も交えながら両立していきたい。
  • テレワークなので、夫婦で交代なら復職も実現できそう。

など、状況により夫婦で協力しながら、育休と仕事を交えていくこともできるようになりました。

産後パパ育休解説図

3-5. 育児休業延長の申出期限

延長を開始したい場合は、延長開始日の2週間前までに申し出をしなければなりません。
再延長する場合は、1歳6ヶ月までの延長と、2歳までの延長の2回手続きが必要です。

  • 1歳6ヶ月まで延長:1歳の誕生日の2週間前まで
  • 2歳まで延長:1歳6ヶ月に達する日の翌日の2週間前まで

育休延長の開始日を選ぶ場合にも、同じく2週間前までに申し出をしましょう。

4. 「パパ・ママ育児プラス」内容をわかりやすく解説

「パパママ育休プラス」は従来のまま継続されます。

「パパ・ママ育休プラス」は、通常子どもが1歳になるまでに取得する育休を、父母ともに取得する場合に限り子どもが1歳2カ月になるまで延長できる制度です。

厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」によると、令和3年度のパパ・ママ育休プラス取得率はたったの2.3%!

正直、「パパ・ママ育休プラス」は使い勝手が悪くて、これを有効的に使える人って誰??と思ってしまう制度なのです。
使いやすい制度なら、取得率が2.3%なんて結果にはならないはずです。

さらに、産後パパ育休の制定と育児休業の改正により、どうやって使う??という謎な制度になりつつあります。

とはいえ、継続される制度ですので、一体どんな制度であるのか、この後解説していきますね。

4-1. 「パパ・ママ育休プラス」を取得できる条件

「パパ・ママ育休プラス」は、通常子どもが1歳になるまでに取得する育休を、父母ともに取得して一定の要件を満たす場合に、子どもが1歳2カ月になるまで延長できる制度。

ではその「一定の要件」とは何でしょう。

 

パパ・ママ育休プラスの要件

  1. 配偶者が子が1歳になるまでに育児休業を取得している
  2. 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前
  3. 本人の育児休業開始予定日が、配偶者の取得している育児休業の初日以降であること

以上の条件をクリアしていれば「パパ・ママ育休プラス」を取得することができます。

「育休取得期間が1年2ヵ月間に延長できる!」
と思われがちですが、違います!

1人あたりの育休取得可能最大日数(1年間)は変わりません。

通常育児休業の終了日は子供が1歳になる日の前日なのですが、それが1歳2ヵ月になる日の前日までになるということ。
育休取得期間の期日が延びるということで、取得日数が増えるわけではありませんので、その点をしっかり理解してください。

1年間の計算は、
【ママ】出生日以降の産休と育休を合わせた取得日数が1年
【パパ】産後パパ育休と育休を合わせた取得日数が1年

取得する際は、パパママ育休プラス開始日の1ヵ月前までに申し出が必要です。

基本的なイメージは下図をご覧ください。

産後パパ育休解説図

4-2. 「パパ・ママ育休プラス」はどう使う?

パパママ育休プラスは1歳以降に適用する制度ですので、育休延長とどう違うのか、わかりにくいですね。

考え方としては、ざっくりとこんなイメージでしょうか。

【育休延長】保育園入園ができず待機児童になってしまい、延長せざるを得ない場合。
【パパママ育休プラス】あえて育休期間を延長したい場合。

1歳の時点で待機児童になってしまった場合は、育休延長制度の利用一択ですね。

パパママ育休プラスが必要になるのは、例えばこんなシチュエーションが考えられます。

「復職後は保育園には入れずに祖父母に預けることになっている。
待機児童にはならないため、育休延長の要件には当てはまらない。
でも、できる限り子供と一緒にいたいので、パパママ育休プラスを利用してもう少し自宅保育をしたい。
1歳2ヵ月まで利用した後、復職する予定。」

あることはあると思いますが、結構なレアケースですよね。

パパママ育休プラスは育休延長との組み合わせもできますが、延長するなら必要ないし、う~~ん、どうなのでしょうか。

それでも利用を希望する方は、雇用主にベストな使い方を相談してみてくださいね。

5. パパの育児休業取得の現状と今後の展開

世界経済フォーラムから公表された「ジェンダーギャップ指数2022」
各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数における日本の順位は世界146ヵ国中116位
先進国の中で最も低く、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となっています。

順位 国名
1 アイスランド
2 フィンランド
3 ノルウェー
4 ニュージーランド
5 スウェーデン
10 ドイツ
15 フランス
22 イギリス
25 カナダ
27 アメリカ
63 イタリア
79 タイ
83 ベトナム
92 インドネシア
99 韓国
102 中国
115 ブルキナファソ
116 日本
117 モルディブ

日本の育児休業制度そのものは、先進国31ヵ国の中で期間や条件面などで1位の評価を得るほど優れた制度です。その素晴らしい制度がほぼ生かされない現状には、この根強い日本のジェンダーに対する考え方が関与してしまっているのでは、と思わざるを得ません。

子育ても家事も仕事も、夫婦が同じステージで同等に行うべきこと。
育児しやすい社会環境を整備し、パパの育休取得が促進されれば、ママの社会復帰がスムーズになり離職率低下に繋がります。
パパの育休取得率の向上が、企業の考え方、社会の考え方によい影響を与えてくれると期待してやみません。

[参考]内閣府男女共同参画局「共同参画」2022年8月号

5-1. パパの育休取得率の現状

厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」によると、育児休業取得者の割合では、ママの育休取得率が85.1%であるのに対して、パパの取得率13.97%
ここ数年、育児休業を取得するパパも見られるようになってきたとはいえ、政府の掲げた男性の育休取得「2025年に30%」という高い目標には程遠い現実です。

また、育休の取得期間については、ママは「12~18ヵ月未満」が34%と最も高く、次いで「10~12ヵ月未満」30%と、大半が1年前後の期間で取得しています。
対してパパは
「5~2週間未満」が26.5%「5日未満」が25%と半数以上が短期間のみの取得となっています。
「1~3ヵ月未満」が24.5%と、少しずつ長めの期間で取得するパパも増えてきていることは明るい傾向です。

日数 2021年度 2018年度
5日未満 25.0% 36.3%
5日~2週間 26.5% 35.1%
2週間~1ヵ月未満 13.2% 9.6%
1~3ヵ月未満 24.5% 11.9%
3~6ヵ月未満 5.1% 3.0%
6~8ヵ月未満 1.9% 0.9%
8~10ヵ月未満 1.1% 0.4%
10~12ヵ月未満 1.4% 0.9%
12~18ヵ月未満 0.9% 1.7%

[参考]厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」の結果概要(PDF)

5-2. パパの育休がとれない理由

育休取得率が低い理由として、以下のような声が多くあがっています。

  • 会社の育児休業に対する意識が低い
  • 職場が育休を取得しづらい雰囲気だった
  • 仕事が忙しくまとまった休みが取れない
  • 収入が減ってしまうため

ほとんどの原因は企業側に課題が多いことがわかります。前例が少ないため、パパの育休取得に対する理解が得られないのが現実でしょう。

ママの育休取得はスムーズだとしても、育休自体をよく思わない人もいたり、復帰した後も時短勤務で肩身が狭かったり、アウトプットに必死で猛烈に仕事をこなしたり、同じ時短ママとの温度差にストレスを感じたり、いろいろとあるものです。
それがパパとなればまだまだ乗り越えなければならない壁が立ちはだかることが想像できますね。

パパの育休取得は増えてきているとはいうものの、育休はママが取得するものという考えが浸透していることは、前章の育休取得期間の数字を見ても明らかです。

パパが当たり前のように育休を取得し、男女がフラットに育児に取り組める環境が、いつの日か日本にも訪れることを切に願います。

6. パパの育休取得で浮上する課題

夫婦で育休を取得し、赤ちゃんのいる生活を一緒にスタートできる、とても素敵なことですよね。
夫婦そろって子育てに専念できる期間を持つことはとても大切だと思います。
特に出産退院後の1ヵ月間は、ママは絶対安静で生活していかなければなりません。パパが育休を取得し、しっかりと家族をサポートしてくれればこんなに心強いことはありません。

同時にパパが育休を取得することの課題も浮き上がってきますので、メリットデメリット両面を見てどのように過ごしていくべきか、家族のスタイルをきめていきましょう。

家族

6-1. 家庭の収入が減る

パパの育休取得がスムーズであれば、まずは1年間夫婦一緒に育休を取得し、子育てに専念できたら理想的ですよね。
ご存知かと思いますが、育休中の給付金は最初の半年で収入の67%、以降は50%となります。育休延長の場合は50%です。
夫婦で育休を取得すればもちろん収入は減るので、それを覚悟しておく必要があります。給付金の支給はおよそ2ヵ月後になるため、その間収入がなくても生活ができる見通しを立てておかなければなりません。

家計の収入源を懸念して、産後1~2週間だけパパは有休を使ってお休みし、育休は取得しなかったいう声もよく聞きます。
パパががっつり育休を取得するには、ある程度の経済力と復職した際もこれまで通りの仕事が確約される堅実な雇用環境が必要だということでしょう。

6-2. 全てのパパが活躍できるわけではない

家事全般を担い、一緒に子育てをし、ママの体調回復をしっかり支えること、そして父親としての自覚を持つこと。これが産後すぐの産褥期にお休みを取得するパパの役割です。

しかし、全てのパパが完璧にできるということはありません。ママの要求度も異なりますし、これについてはご家庭の考え方により判断も違います。
育休パパが活躍できなければ、家にいることで逆にママのストレスになってしまうケースもあります。長期休暇と勘違いをしてしまう残念なパターンもあるようです。

柔軟性がアップし、いくつかのステップで取得できるようになった育休制度です。
取得方法について夫婦でしっかりと話し合い、ご家庭の状況に合う方法を選んでみてください。

7.  労働局雇用環境・均等部(室)都道府県一覧

育児休業について詳しくは、各都道府県の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へお問い合わせください。

北海道 011-709-2715 青森 017-734-4211
岩手 019-604-3010 宮城 022-299-8844
秋田 018-862-6684 山形 023-624-8228
福島 024-536-4609 茨城 029-277-8295
栃木 028-633-2795 群馬 027-896-4739
埼玉 048-600-6210 千葉 043-221-2307
東京 03-3512-1611 神奈川 045-211-7380
新潟 025-288-3511 富山 076-432-2740
石川 076-265-4429 福井 0776-22-3947
山梨 055-225-2851 長野 026-227-0125
岐阜 058-245-1550 静岡 054-252-5310
愛知 052-219-5509 三重 059-226-2318
滋賀 077-523-1190 京都 075-241-3212
大阪 06-6941-8940 兵庫 078-367-0820
奈良 0742-32-0210 和歌山 073-488-1170
鳥取 0857-29-1709 島根 0852-31-1161
岡山 086-225-2017 広島 082-221-9247
山口 083-995-0390 徳島 088-652-2718
香川 087-811-8924 愛媛 089-935-5222
高知 088-885-6041 福岡 092-411-4894
佐賀 0952-32-7167 長崎 095-801-0050
熊本 096-352-3865 大分 097-532-4025
宮崎 0985-38-8821 鹿児島 099-223-8239
沖縄 098-868-4380

8. まとめ

最後までお付き合いくださりありがとうございます。

「産後パパ育休」「新・育児休業」についての理解は深まりましたか?

法改正により、柔軟性が高まりましたが、その分複雑さを増してしまったようにも感じます。
新しい制度が全てのご家庭にフィットするわけではないと思いますので、まずは制度の内容をしっかりと理解し、取捨選択しながら上手に活用していきましょう!

一日も早く、パパの育休取得が当たり前の社会になりますように。

※記事内容は2022年10月現在の情報です。

監修:大原労務管理事務所

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